2025年タイ労働法改正:家族関連休暇の拡充と年次報告義務強化
Authored by 鍋島 詩織, Senior Consultant, パーソルコンサルティング タイ • 3 min read
改正の背景:家族支援と労務コンプライアンスの強化へ
今回の法改正の背景には、労働者の家庭責任を支援する施策の強化と、労働環境の透明性を高めるという政府の方針があります。特に、タイで合法化された同性婚の影響もあり、法律上の「配偶者」概念が整理されたうえで、新しい家族関連休暇が導入されました。これにより、同性婚の配偶者にも新制度が適用されることが明文化されています。 また、企業側に対しては、従業員の雇用状況を正確に把握し、毎年報告することが義務化され、労務管理の精度向上が求められる流れとなっています。
改正ポイント①:家族関連休暇の拡充
1) 産前産後休暇:98日 → 120日へ
従来98日だった産前産後休暇が120日に延長され、このうち60日は企業が全額給与を支払う義務があります(従来は45日)。休暇日数の増加により、企業は長期の業務代行やシフト調整が必要になるため、より計画的な人員管理が求められます。
2) 配偶者向け15日の有給サポート休暇
新設された制度として、配偶者が出産した従業員が15日間の有給休暇を取得できるようになりました。取得は男女問わず可能で、同性婚配偶者も対象となります(婚姻登録が必須)。 これまでタイでは民間企業における配偶者向け休暇制度が法定で存在しなかったため、企業側は規程の新設が必要となります。
3) 新生児の健康上のリスクに対応する追加休暇(15日)
新たに、新生児が健康上のリスク・障害・合併症を抱える場合に、母親が15日の追加休暇を取得できる制度も導入されています。給与支給は50%で、医師の診断書提出が要件となります。これにより、育児の負担が大きいケースへの実務的なサポートが整備されました。
改正ポイント②:Kor Ror 11 年次報告義務の明確化
従来、雇用条件報告書(Kor Ror 11)の提出は、労働局からの要請があった場合のみ求められていました。しかし今回の改正により、従業員10名以上の企業は、毎年1月に必ず提出する義務が明確化されました。さらに提出方法についても、従来の紙提出から、官報で示される新しい指定方式(電子申請等)へ移行することが規定されており、企業側のデータ整備が一段と重要になります。
日系企業が注意すべき実務ポイント
1) 給与計算と勤怠管理の運用変更
給与支給の義務範囲(60日の全額支給、追加休暇の50%支給など)が変わるため、ペイロールシステムの設定変更や、担当者教育が欠かせません。長期休暇取得が増えることで、勤怠管理における承認フローの明確化も求められます。
2) 就業規則・人事制度の改訂と従業員周知
制度改正に合わせ、
• 就業規則の改訂
• 休暇申請の手続き
• 必要書類(診断書等)の明確化
などを整理したうえで、全従業員に周知することが重要です。制度はあっても運用が曖昧だと、労働局の調査や従業員からのクレームに発展するリスクがあります。
3) Kor Ror 11対応の体制整備
日系企業では、「誰が報告書提出を担当するのか」が曖昧になりがちです。誰が責任を持つかを明確化し、毎年1月の定例業務として組み込む仕組みづくりが求められます。
おわりに
今回の労働法改正は、単に規定をアップデートするだけでなく、自社の制度が現場で実際に機能しているかを見直す良い機会でもあります。ルールが現場の運用にしっかり落とし込まれ、従業員が安心して活用できる環境を整えることこそが、企業の労務コンプライアンスの質を高めることにつながります。
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本記事に関するお問い合わせ
パーソルコンサルティング シニアコンサルタント
鍋島詩織 (Shiori Nabeshima)
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